QOL&Sculptra
(Bay Area Reporter紙 2005年3月24日号)
先日、渡米したときに読んだ地元ゲイ新聞の広告で気になるものがあった。Sculptra治療を実施するクリニックの広告である。
AZTから十数年、プロティーアーゼ阻害剤が使われ出して10年が経とうとしている。それらの薬剤によって飛躍的に治療効果が上がっているのは周知の事実である。 しかしながら、これらの薬剤の長期使用者から、容姿に関する副作用が少なからず現れている。 長期服用で「頬」が窪んでしまうのである。
去年8月に米国のFDAがSculptra(New-Fill)をHAART(Highly Active Anti-Retroviral Therapy/抗HIV多剤併用療法)の副作用として現れる皮下脂肪枯渇の修復に、条件付で使用を認めた。 ヨーロッパでは1999年に公的機関が使用を認めていたのに対してFDAは、使用経験の少なさ、将来的な不安で躊躇していたが、現実的に現在時点において、他の物質が無いことから、限定的に認めた経緯がうかがえる。
Sculptraは、脂肪族ポリエステルに属するPLA(ポリ乳酸)の充填剤である。 シリコンやコラーゲンと違い、とうもろこしやジャガイモなどのでんぷんや糖類を乳酸菌で発酵させ、化学処理によって結合させて作られるプラスチックだそうである。
開発元は、植物由来の成分での製品なので、アレルギーがおきない、効果は永久的ではなく徐々に体内に吸収される。そして生体触媒として働き、コラーゲンの自己産生を促す、と主張している。
慎重派は「「ニューフィル」のリスクは、いかに生分解性があり免疫不活性(免疫機能に悪影響を及ぼさない)といったところで、体内に残ったPLAが最終的にどのようになるのかが明らかになっていない。自然界に帰れば土壌の中にある微生物や細菌によって分解・還元されることがわかっているが、体内にあるうちはどのような工程をたどるのか?また、仮に患者が除去を希望してもそれが非常に難しいというこでもある。
この治療は当然自費扱いになるが、アメリカでは1回400ドル、広告では2年半の期間使用した例が載っているが、仮に月1回でも30回、12000ドル(約130万円)かかる。そして、効果は徐々に落ちるので、充填はずっと続くのであろう。
何も「ゲイ」だけでは無いが、容姿特に顔が変わるということは、かなり精神的にダメージを伴う。HIVを持っている人へ大きくQOLを向上するものだと思う。 しかし月々の抗HIV薬の投薬とこの治療を受けて、その医療費を払える人は、ほんの一握りとなるであろう。
この治療はHIVのクスリを長期に飲んでいる人への福音になりうるのであろうか。
(このエントリーのニュースソースは「ピグワイ」 http://www.pig-
y.com/topic/new-fill.htm)
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