街・変貌・閉店
突然のゲイバーの閉店。事前に知らなかったので、いつものように出向いたら、張り紙がしてあり、しばし呆然とした。
(3月13日で営業を終えたLoading Dockのドアに張られた紙)
といっても、サンフランシスコの話だが。 私は、サンフランシスコの中でも、「South of Market/SOMA」と呼ばれる地域が好きだ。
10数年前そこを初めて訪れた時は、本当に薄暗い汚いエリアだった。 小さな自動車整備工場や倉庫が並び、夜は薄暗く、そこに住む人は少なかった。住んでいる人も、比較的低所得と外見からはっきりわかるか、セーフウェイのショッピングカートに自分の所有物一切を入れて流離う方々たちであった。 地元の<普通>の住民は、夜は絶対に近寄らないエリアだった。
サンフランシスコのゲイ達は、大概が「Castro」周辺に遊びに行く。 ゲイ向けに洒落たレストランやショップ、そしてナイトライフのバーやクラブもたくさんある。 ガイガイ、ワヤワヤ楽しく、昼に夜に過ごす雰囲気である。 比較的年齢構成も若い。
ゲイ達の一部にはこの「明るく爽やか」な雰囲気が苦手な人たちがいる。 レザー、バイカー、SMなどが好きな人たちだ。 そのような人たちは、敢えて、Castroを少し隔てて、SOMAに集まりだした。 もう死語に近いが「ハードゲイ」達である。
”S.F. Eagle”、”My Place”、 ”Lonestar Saloon”、 ”Loading Dock"など、レザー系バー、”Mack”、”Blow Buddies"などのSM系ハッテン場が次々と誕生した。
ある意味、一般市民から「危険なエリア」と思われていたため、それがバリアとなって、うまく隔離できていた。
時が過ぎ、現在のSOMAエリアは新興エリアとなり、「ファッショナブル」なエリアと変貌を遂げつつある。 モダンなマンションが次々建ち、自動車整備工場が、巨大なストレート向けのクラブに変わり、洒落たレストランが開店していく。
このような環境の変化の中、興味本位だろうが、赤く薄暗いレザーバーの中に、あまりのも場違いなドレスを着た若い女性が出入りするようになった。 これらのバーは、夜が更けると、奥の暗いほうでハッテン行為を行うのが当たり前だが、そこに、女性がいると、激しく萎える、少なくとも私は。
(左:SOMAのバーの店内の様子。日曜日の夜12時ごろ 右:その外Harrison St.)
これらの店は21歳以下の未成年の入場は厳しくチェックするが、男女の差で、入場を制限できない。 すると「差別」となるのである。
去年、往年で一番賑やかだったレザーバー”My Place”が閉店した。 そして、今月、古いレザーバーの雰囲気を受け継いだ”Loading Dock”も閉店となった。 しょうがない状況はわかっていても、寂しい。
現在、盛業中の”Eagle”は本来、本格的なレザーバーであったが、オーナーが変わったことでイメージチェンジをした。 すこしイメージに変わり、週末、午後の日が降り注ぐ中、レザーマン達が「健康的」にパティオでビールを飲むバーと変わった。
(S.F.Eagleの土曜日の午後。Beer Bustという、チャリティ目的の飲み放題がある)
私のハンドルネームの由来である”Lonestar Saloon”は、多分世界で一番有名で大きい「熊」バーである。 ここも途中でオーナーが変わったが「熊」を中心に、バイカー、レザーと客層をはっきりさせたこと、また、それほど店内を暗くする必要も無く、対抗する熊系バーが無かったことでビジネスとしては成功している。
地元のゲイエリアの案内本には「SOMAのバーの客は驚くほどブルーカラーの人たちである」と書かれているのを、つい最近読んだ。 私はそれを読んで、改めて認識した。 実際にここに来る人たちが全員ブルーカラーの職業に就いているわけではないが、ここにあるバーへ、スーツとネクタイで行ったら、間違いなく浮いてしまう存在になるであろう。
今は新築でガラス張りのオーガニック専門の高級スーパーがあると思うと、その前には、旧態依然とした、「食料品店」も混在している。
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