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 大きな話題だったが、それを知ったとき「やっぱり」と思っただけで、すぐに忘れた事があった。日本で最初のゲイ雑誌の「薔薇族」の休刊のことだ。

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 私が初めて買ったゲイ雑誌は「さぶ」である。約30年も前の話。地元の書店で平積みにしてあった「さぶ」誌の表紙を見たときに背筋に電流が走ったのを今でも覚えている。当時表紙の絵を描いていたのは三島剛氏であった。男臭い顔、体、そして刺青。眠っていた自分の内面の方向性をそこに見つけたのであった。当時中学生であった私は、その本を買うのが難儀ではあったが、何とか買うことができていた。内容は、それこそ、中学生だった私には十分すぎるほど濃厚な物であった。今の基準からすれば、グラビアなどはおとなしい物であった、クオリティも高くなく単に「男のハダカ」が載っている程度の物であった。しかし、小説は、秀逸な作品が並んでいた。何度と無く読み、繰り返し利用した。当時「さぶ」誌は、月刊以外にも「季刊さぶ」という、小説中心の別冊をつくっていた。月刊誌の小説の再編集の感があったが、そこそこ楽しめた。そして、ちょっと大きめの週刊誌サイズの雑誌「あいつ」が創刊された。大きいサイズにしたかった意気込みは良かったものの、中身が「さぶ」誌を踏襲していたため、差別化できなくすぐに休刊。時系列は定かではないが、この間に、「ムルム」「アドン」が刊行された。「サムソン」もこのあたりか。毛並みの変わった「The Gay」もあった。また、薔薇族は一時「バラコミ」というコミック雑誌もつくった。(広告の「ニュー・ホモ・マガジン」には笑える)
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 私は、ゲイに目覚めてから、この方、方向性は「野郎系」。安易に分けると「薔薇族」「アドン」「バディ」の系列と「さぶ」「ジーメン」ちょっとはなれて「サムソン」の系列だと、いまでも後者を選ぶ。「薔薇族」も昔、購入したことがあるが、習慣化はしなかった。
  話は美国の話になるが、94年位から定期購読していた雑誌があった。名前は単刀直入に「BEAR magazine」、Brush Creek社から出ていた。 ベアのコミュニティで初めて出版された雑誌はこの雑誌であった。この雑誌をサンフランシスコの本屋で見つけたときは、中学生にとき「さぶ」誌を見た以上に鮮烈であった。インターネット以前の世界で、日本で売られていた雑誌やビデオには強力なモザイクまたは墨塗りがしてあった時代、「好みのタイプの男がモロ_ダシの写真満載」の雑誌。パラダイスであった。それから約8年が過ぎた。世の中はインターネットの時代。マウス操作だけで、「好みのタイプの男がモロ_ダシの写真満載」が簡単に、そして、常時接続のおかげでコストも気にせず手に入る。文通欄も、あちらでは、[Man to Man Personal]とか[Personal Ad]と称していたが、これも月刊誌がインターネットにかなうはずがない。ビデオに進出して、男優のジャック・ラドクリフ氏を起用たりして、社会の中でニッチなゲイの分野の中で、更に更にニッチなベアコミュニティの中でビジネスを展開していた。彼らの会社だけで終わればハッピーエンドだっただろう。しかし、そんなニッチなマーケットでも競争相手が現れるのがアメリカである。まず雑誌は「American Bear」誌が発行される、のちに「Bulk Bear」「CUB magazine」「100% beef magazine」などである。ビデオは、マンハンター社はじめ数社が、このニッチマーケットに参戦している。
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  私がサンフランシスコで定宿にしているホテルの前が、Brush Creek社で、オフィスの他に小さなショップを持っていたので、お土産ものをよく調達していた。数年前、訪れたが、ドアが閉まっている。そのドアには張り紙があった。「Brush Creek社は、税金を未納にしたため、この建物内の財産を差し押さえる」と。結局、この会社は潰れた。私を含めた多くの定期購読者へ前納していた購読料は戻ってこなかった。
ビデオの版権はマンハンター社などに売られた。私は内部の事情について深くは知らない。税務、マネージメントが良くなかったのだと思っている。日本の薔薇族同様、ニッチニーズのパイオニアだったのは事実である。スタッフも、有能な人は後に、新しい会社を起こした「Bear Flims」のホフマン氏は元ベアマガジン編集長であった。
  雑誌も商売である。故に常に競争を強いられる。マーケットは更に敏感で、すぐに反応する。正直いって「薔薇族」がここまで生きながらえたことは、今の世の中不思議なくらいである。

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コメント(1)

でんすけ :

老舗のさぶに引き続き、薔薇族もかぁ・・・
 さぶの編集体質って、年功序列傾向にあったって、某氏から聞いたことがあるのだな
 それに薔薇族も、伊藤文学さんがワンマン的にしてたって印象があるんだけど、うまく後継者が育てられずに続けられなくなったってことなのかなぁ?
 単純なことではないけど、1代で終わらせるってもの、俺としては、いいんじゃないのかなぁ?と思うのだな

 さぶにしろ、薔薇族にしろ休刊、廃刊しちゃっても、それによって影響を受けたなんらかが芽吹いて、今の業界があるわけだしね

 なんか身につまされる話なんで、思わず書き込んだだす
 ふはは

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1962年東京生まれ
1994年結成以来、Bear_Club_of_Japan 代表・会長

◎日本のGLB&Tコミュニティの中でひっそりと生息している◎日本各地、世界各国を熊を求めて行脚しているらしい◎最近は沖縄とサンフランシスコに頻繁に出没◎パートナーあり◎体重6キロのシャム猫と同居◎

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このページは、Lonestarが2004年9月29日 14:22に書いたブログ記事です。

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