ウイルス対策
ウイルス対策。もらってしまうと、何とも厄介なシロモノである。
先日、検査の結果を聞きにいった。いくつになっても、この状況は緊張する。生理的に嫌いである。行き先は「東京都新宿南検査室」、そう、HIVの抗体検査。
初めて受けたのは、28歳のとき、東京都が重い腰を上げ、世界エイズデーに関連した催しとして、広く一般の人に、無料で抗体検査を行ったのだ。場所は中野サンプラザ前の広場。当時の状況をはっきり覚えている。検査申し込みは、住所氏名、年齢職業をきっちり書かされた。寒い中、街頭で、仕切りのないテントの中で採血された。
2週間くらい待たされた。その中で、色々な悪行を思い出しながら、心の中では震えながら待った。その結果が下の写真である。実名、公印入りの通知書。
今の感覚でいえば、「とんでもない」体制だが、当時は、これも画期的な出来事であった。プライバシーの感覚も薄い、表記に「AIDS抗体」と表記するなど、慌てて、「取り急ぎ、やってみました」程度のものではあるが。陽性者へのサポートはどうだったのだろうか。想像すると怖い。
それ以来、ある程度定期的に受けている。特に90年代は、サンフランシスコに入り浸っているため、いくら安全に、事を行っているとはいえ、やはり、グレーゾーンはある。よって、確率は、かなり高くなっていると自覚している。だから、検査しなきゃ、とは思うけど、結果を聞くのはいつも辛い。この繰り返しの14年間。
以前、本当の安全な行為は、電話&ネットの上だけと言われた。確かに、これは間違いない。しかしながら、私は、それでは我慢できない。いろいろな行為を、色々な場所で、いろいろな人と行っている。その行為の最中、小さな妥協が生まれる。さすがに一般的に危険と考えられている行為は、避けるが、グレーゾーンの行為は、してしまうことが多い。こうして、数年が過ぎ、過去のグレーゾーン行為の回数が増え、検査の結果を聞きに行きずらくなる。だから、のびのびになり、回数が増え、悪循環である。
私の周りにはHIVと共生している人が、何人かいる。10年前付き合っていた人は、最初から、私にカミングアウトしていて、その上で、付き合い始めた。その人は、現在も、うるさいほど元気だが、悲しい事も数回あった。
10余年前から比べれば、行政側、NPOともに量・質とも向上した。草の根運動的に、バーなどにコンドームを配っている方々など、本当に献身的と思う。aktaもそのひとつ。
現実的には、中年域の方が、発症してから受診するケースが多いと聞く。10年前、治療薬はAZTしかなかった。今はプロティアーゼ阻害剤他、有効な薬剤が相当数あり、それを組み合わせることにより、治療の効果を上げることができるようになった。至死の病から慢性血液疾患に変わってきた。
マスコミが取り上げなくなっても、確実に感染者数は増えている。それぞれの人の周りに、HIVを持った人がいないので、もう、収まったかと、感じている人も多いのではないか。若年層では、医療技術の進歩の報道などで、薬を飲めば「完治」すると思う人もいるだろう。
確かに、HIVに感染したくらいでは、現在の医療技術では、当分死なない。しかし、その間、ずっと、薬を飲み続けなければならない。長期投与による、副作用の例も増えつつある。経済的にもつらい、ある友人は、生涯払い続けなければならないローンを組んだようだと、私に言った。社会的にも、偏見や差別が無くなったとは聞いたことがない。やっぱり、感染しない方が絶対に良い。・・・・これは、頭で考えていることである。下半身の行動と、相対することのコントロールの難しさ。しばらくは、怖々、検査を受けに行くことが続く。
検査所の帰り、電車で隣に座った女性が、着席したとたん、某量販店で購入したと思われるパソコンソフトのパッケージを袋からだした。「これで安心、ウイルス対策・・・」。あまりのタイミングの良さに、心の中で笑ってしまった。
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コメント(1)
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Yesturday
(自己レス)
この記事かいて、ネットで色々なサイトをのぞいていたら、HIVの問題は、結構深刻な状態になっている状況と感じました。とあるゲイサイトの相談室では、かなりの数がHIV絡みでした。
そのなかでも、HIVを持っているのにもかかわらず、不特定多数の人と危険な行為を行っている。というもの。に関心が行きます。
ネット掲示板には「煽り」ということばがあるが、これらの発言も100%信じることはできません。10年以上前に何処かが行ったアンケートで、「もしあなたがHIVを持っていると診断された場合どうしますか?」という質問に対して「誰かに、うつしまくる」と答えた人が少なからずいたからです。
この先は心理学的、社会学的研究課題かもしれませんが、現代の若者気質をこの年齢から見ると、「あいつら、本気でやりかねないな」と思います。